太宰治 葉 読み方
姉だと思ってくれという女のセリフに「キモッ!」と思いながら、そのつもりでいるんですと答える葉蔵。微笑の表情を「作って」という書き方も秀逸です。その女は、いつまでも自分について歩いて、そうして、やたらに自分に、ものを買ってくれるのでした。というのは、女性に対する葉蔵の一貫した態度です。それは以下のエピソードからもわかります。シヅ子という女性の発言です。葉蔵はこの女性のヒモになります。シヅ子は葉蔵の弱さに惹かれているのです。あなたを見ると、たいていの女のひとは、何かしてあげたくて、たまらなくなる。いつも、おどおどしていて、それでいて、滑稽家なんだもの。時たま、ひとりで、ひどく沈んでいるけれども、そのさまが、いっそう女のひとの心を、かゆがらせる。引用の記述は 文春文庫『斜陽 人間失格 桜桃 走れメロス 他七篇』によるこれは、下宿先の娘が葉蔵の部屋に入ってきて急に大泣きをしたシーンです。葉蔵は柿をむいて手渡します。その柿を食べ、女は落ち着きを取り戻して部屋から出て行きます。女が急に泣き出したら普通の男はオロオロしますが、この神対応。「すまないけどね、電車通りの薬屋に行って、カルチモンを買ってきてくれない?あんまり疲れすぎて、顔がほてって、かえって眠れないんだ。すまないね。お金は……」まだ読んだことがないのであれば、一度読んでほしい傑作です。今の言葉とほとんど変わらない文体で書かれているので非常に読みやすいです。また、10代で読むのと30代になって読むのとでは読んだ印象が違う作品です。太宰治の『人間失格』。太宰の代表作にして無頼派の代表作。読んでいると気分が落ち込んでくる作品ですが読みやすいのでサクサク読めてしまう。飲みやすいけど度数高いお酒みたいな作品です。次のシーンは、葉蔵が仕事がクタクタで寝ている時に、わざわざ葉蔵の部屋に入ってきて誰かに宛てた手紙を書く娘とのシーン。この娘は葉蔵に気があるのです。めんどくさいと思いながらも葉蔵が話しかけます。クタクタに疲れているのに、娘の気持ちを察して話しかける葉蔵。死んでも見たくないと思いながらも「見せてよ」と言うサービス精神。うれしがる娘をみっともないと思うさめた感情。作品の中でも、葉蔵の言動と感情の乖離がひどく顕著な場面でうすら寒い感じさえします。早くこのひと、帰らねえかなあ、手紙だなんて、見えすいているのに。へへののもへじでも書いているのに違いないのです。ですがこれ、モテない男子のためのモテ指南書としても読むことができます。なんと言っても太宰は文学界で屈指のモテ男。様々な女性と浮名を流しています。心中事件も2回。一緒に死んでくれる女性を2人も探せますか?無理でしょ。ということで、今回は『人間失格』の中からモテたい男にぜひ味わっていただきたい文章を抜粋しました。モテたい男は太宰を見習おう。生活費は実家に頼り、飲み代は友達や彼女に払ってもらったりします。モルヒネ中毒になりますが、モルヒネ代は薬屋の奥さんが支払いの猶予をくれます。もはや天性のヒモ。なかなか普通の人にはできないです。適度に女を頼ろうというのと似ていますが、頼り頼られというのは人間関係の基本です。「女から来たラヴ・レターで、風呂をわかしてはいった男があるそうですよ。」次のシーンは、葉蔵がある女との会話を打ち切るために、女に用事を頼む場面です。いったい女は、どういう気持で生きているのかを考えることは、自分にとって、蚯蚓(ミミズ)の思いを探るよりも、ややこしく、わずらわしく、薄気味の悪いものに感ぜられていました。だが、自分は、女があんなに急に泣き出したりした場合、何か甘いものを手渡してやると、機嫌を直すということだけは、幼い時から、自分の経験によって知っていました。と死んでも見たくない思いでそう言えば、あら、いやよ、あら、いやよ、と言って、そのうれしがること、ひどくみっともなく、興が覚めるばかりなのです。よろこんで立ちます。用を言いつけるというのは、決して女をしょげさせることではなく、かえって女は、男に用事をたのまれると喜ぶものだということも、自分はちゃんと知っているのでした。女は引き寄せて、突っ放す、あるいはまた、女は、人のいるところでは自分をさげすみ、邪慳にし、誰もいなくなると、ひしと抱きしめる、女は死んだように深く眠る、女はねむるために生きているのではないかしら、その他、女についてのさまざまの観察を、すでに自分は、幼年時代から得ていたのですが、…(中略)…いったいに、女は、男よりも快楽をよけいに頬張ることができるようです 6月に入ると「もうすぐ桜桃忌か」など聞くこともあると思いますが、これは一体何の日なのか分からないという方も多いですよね。実は桜桃忌とは文豪・太宰治の忌日で、太宰治を偲ぶ日として名付けられたんです。桜桃忌では太宰治の墓がある三鷹市の禅林寺に多 【たまコラム:太宰治のすべて】第1回:そもそも太宰治って誰?/前田沙耶子 &nb …【執筆仲間の見つけ方】信じ続けて「仲間」を得る/笠原小百合 長いことひとりで小説 ………というわけで、以上3つの名言を挙げさせていただきました。どれも「文豪」太宰治としての言葉であり、特に最後は胸に刺さるようだなあと感じます。とても良い天気の朝、自宅の窓を開けてひとこと。そんなに不審がらなくても……。これは若いころの太宰の口癖であったと言われています。太宰治は芥川龍之介に対して並々ならぬ情熱を抱いていました。太宰が「芥川龍之介芥川龍之介……」と名前を書き連ねている授業ノートが見つかった、というニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。次回は本当に未定なのでいよいよ追い詰められています。今後は作品にスポットを当ててみるのも良いかなあ……等いろいろ考えてはいますが、やっぱり未定です。こんなことをしていたら嫌われるのも当然ですし、マダムからすればたまったものではないと思いますが、このエピソードを初めて読んだときは思わず笑ってしまいました。どれだけ必死なんだ、とも思いますが、どことなくユーモラスな言い訳ではないでしょうか。ちなみにこれは『晩年』を書き上げる直前の話で、このときも檀一雄と一緒だったそうです。ここでもお金のトラブルに巻き込まれている檀からすれば、太宰はなかなか厄介な友人であったかもしれません。あるとき太宰は熱海のとある旅館に入り浸っていました(小説執筆のためとも言われていますが真偽は不明)。そんな太宰を心配した美知子夫人は、友人である檀一雄に宿代と交通費を持たせ、連れ戻してきてほしいと頼みます。檀がいざ熱海に着くと太宰は大喜び。あちこち飲みに連れまわし、あっという間にお金を使い切ってしまいました。帰ろうにも飲み屋のツケや宿代が足りません。困った太宰は檀を人質として置いて行き、自分だけ東京に戻って井伏鱒二にお金を借り、また戻ってくる、という策を思いつきました。そんな太宰が最後に執筆した未完の小説のタイトルは、『グッド・バイ』。田島周二という男が次々と愛人に別れを告げていく物語です。このタイトルは井伏鱒二が『勧酒』という漢詩の「人生足別離」という部分を、「サヨナラ」ダケガ人生ダ、と訳したところから来ています。太宰はこの訳が大層気に入っていたようで、『グッド・バイ』の前書きにもこの言葉を引用し、「まことに、相逢った時のよろこびは、つかのまに消えるものだけれども、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きているといっても過言ではあるまい」と語っています。本郷にある『紫苑』という喫茶店によく出入りしていた太宰。しかし太宰はその店のマダム・三潴(みつま)ハルに何度も車代をせびっていたため、彼女から嫌われていたそうです。その手口は実に巧妙。小説を書くには自分を良い子に見せようという気持ちや恥を捨てなければならない、という「小説家」太宰のスタンスが見えるひとことです。自分の全てを曝け出す――というのは、大きすぎる自意識に苛まれ続け、またそのような人物を多く描いていた太宰には並大抵のことではなかったでしょう。しかし、自身のドラマティックとも言える生涯を私小説として書き続けた太宰の人生を体現している言葉であるとも言えるのではないでしょうか。ちなみに太宰は芥川の名前を冠した芥川賞に対しても並々ならぬ情熱を抱いており、また賞を獲る気も満々だったので、落選時は相当荒れたようです。選考委員のひとりであり、太宰の作品を批判した川端康成に対しては「大悪党」、「刺す」とまで書いていますが、そのエピソードについてはまたの機会に。こんにちは、前田沙耶子です。前回は「そもそも太宰治って誰?」というテーマで書かせていただきました。変な部分ばかりピックアップしてしまった気もしますが、太宰について、少しでも興味を持っていただけたでしょうか?しかしながら今回は、太宰治の肉声――すなわち、家族や友人などに語った言葉や書簡などから「名言」、そしてちょっと笑える「迷言」を、私の独断と偏見で選び、紹介していきたいと思います。太宰は作品中でも実生活でも、たくさんの名言を残しています。たとえば、何度も例に挙げている『人間失格』。「第一の手記」の冒頭文、「恥の多い生涯を送ってきました」と言えば、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。また、『桜桃』の「子供より親が大事、と思いたい」や、『HUMAN LOST』の「笑われて、笑われて、つよくなる」なども有名です。酩酊状態で混雑した電車に乗り、女性にしなだれかかるような格好になってしまった太宰。女性が露骨に振りほどこうとすると、相手を睨んでこう言ったこうです。これはもう、100%太宰が悪いと思います。税務署からの通知書を目にして。税金を放置したまま熱海に行ってしまい、帰ってきたときには審査請求の期限が切れていました。美知子夫人の前で「坊ちゃんが腕白坊主にいじめられ」たようにメソメソと泣いたそうです。【たまコラム:太宰治のすべて】第3回:芥川賞を取りたい!/前田沙耶子 『文豪スト …どこまでも正しく嘘偽りなく、という創作に対するまっすぐで誠実な姿勢が窺えます。小説家のたまごが気になるテーマごとに、担当たまコライターが数回から十数回程度のコラムを、連載形式でお届けします。……以上、「太宰治の名言・迷言」でした。文豪としての太宰と、ユーモアと人間味のあふれる太宰、どちらも感じていただけたでしょうか?閉店後いったん店を出た太宰は、もう1度戻って来て扉を叩きます。マダムが戸を開けるとこう囁きます。新連載 たまご、たまごたまご。たまご。 今回スタートするコラムのテーマは『たまご …ちなみにこのエピソードに聞き覚えがある方も多いと思います。そうです、この体験から着想を得て書かれたと言われるのが、『走れメロス』なのです。こんな言い訳をしておきながら見事に美談に昇華してしまいました。さすが太宰です。『グッド・バイ』は先述のように未完にして絶筆となった作品で、原稿は第13回までが出来上がっていました。また、太宰は6月13日に自殺しています。聖書をよく読んでいた太宰は「13」という不吉性に気付きながら、あえてそのタイミングでの死を選んだのではないか、という説も唱えられています。もしもそれが正しいのであれば、太宰が最期に残した言葉は「グッド・バイ」だった、とも考えられるのではないでしょうか。さてここからは、太宰の人間味あふれる迷言部門です。ちょっと趣向を変えて、ランキング形式で紹介していこうと思います。が、いくら待っても太宰は帰ってきません。しびれを切らした檀が飲み屋と宿に事情を話し東京に行ってみると、2人はのんびりと将棋を指していたそうです。当然憤る檀。しかし太宰はひとこと、太宰はこう言ったしばらく後に、小山初代との離婚を決意しました。他にも3度に渡る心中など、人生において幾度となく「別れ」を経験しています。【たまコラム:たまご、たまごたまご。たまご。】第1回:鈴木素肌 でてくるひと 「 …【執筆仲間の見つけ方】とある司書の日記/黒田なぎさ (「たまごたちの書庫シリーズ …【たまコラム:太宰治のすべて】第4回:芥川賞を取りたい!②/前田沙耶子 こんにち …芥川は太宰が高校1年生のときに「将来に対する唯ぼんやりとした不安」を理由に自殺してしまいました。だからこそ若いころから、自身の文学と死を関連付けるような考え方をしていたのではないか、と私は勝手に思っています。遺書のつもりで書いたと言われる『晩年』が大ヒットを飛ばし、そこから太宰の文壇生活が始まっている、というのも、太宰と死の密接な関わりを体現しているようで、因果な話であるような気がします。Copyright© 小説家のたまご , 2016 All Rights Reserved.新連載:太宰治のすべて 今回スタートするコラムのテーマは『太宰治のすべて』です。 …というわけで太宰に関する質問や取り上げてほしい事柄などありましたら、コメント欄やツイッターなどでお気軽にお声掛けください。たまごライター二期生である、八湊真央(柴田花蓮)さんが、本記事をもって任期満了と …
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